『Dies irae』、『Garden』、そして『モリー・テンプラーと蒼穹の飛行艦』(の帯)との遭遇。

 『Dies irae』と『Garden』。この二つのエロゲーが、年末年始のエロゲー界隈を騒がせたのは記憶に新しいところです。その頃俺は、ある一冊の書物と書店にて遭遇していました。
 『モリー・テンプラーと蒼穹の飛行艦』(スティーブン・ハント著 富永和子訳 エンターブレイン
 まずは、エンターブレイン紹介ページをご覧ください。ロンドンのそびえる街並みをバックに、背中合わせの少年と少女。なかなか魅力的な表紙絵です。そして、

 「あなたはわたしの騎士(ナイト)…それ以上よ」
 魔法と機械が生み出した、世紀末ロンドに酷似する世界<ミドルスティール>。少女モリーは少年オリバーとともに、今、運命の翼へと飛び乗る。イギリス・ファンタジー文学の次代をになうスティーブン・ハントの処女作

 とのキャッチコピー。これはそのまま実際の帯にも使われています。皆さんは、この表紙絵と紹介文を見て、どのような作品をイメージされたでしょうか。俺はラピュタ……とはちょっと違うかもしれませんが「少年と少女が手に手を取り合って困難を解決しながら空へと駆け上がる、ボーイミーツガール(あるいはガールミーツボーイ)」を想像し、期待しました。と言うか、それ以外想像しようがないですよ。「あなたはわたしの騎士…それ以上よ」だぜ? だがしかし!(以下、ネタバレ……じゃないと思うけど、そう言われても困るので収納)


 なんと、「あなたはわたしの騎士…それ以上よ」というセリフは、モリーちゃんがオリバー君に語ったものではないのである。嘘だろ。この本、700ページにもわたる大作なんだけど、そのうち、モリーとオリバーが邂逅する場面は、いいとこ10ページかそこらじゃないだろうか。会話だけ抜き出したら、多分両手で数えられる行数になってしまう。いやもうね、購入した瞬間から俺の頭は「ボーイミーツガール」モードにセッティングされてるからさ、彼らがいつ出会うのか楽しみにしてたわけですよ。100を過ぎたあたりで首を傾げ、200を過ぎて自らを宥め、300を過ぎて焦りだしたもんです。500を間近にしてようやく二人が出会った瞬間の俺の安堵ったら無かったね。あぁ、こっからだ、と。残念ながらそのあとすぐに別れてエンディングまで突っ走って、もはやボーイミーツガールのボの字も無かったことに気づくわけで。<オリバーとともに>じゃねえっての。なんていうか、「凌辱ヌキゲーだと思って買ったら、純愛エロ薄数クリックゲーだった」みたいな? 2310円返せよ。修正パッチまだああああああああああああってエロゲーなら騒がれそうなもんだけど。
 正直、ディエス=ガーデンの連発喰らったのは、これを耐えるための試練だったんだと、そう思いましたよ。パケ買いって怖い。やってくれるぜエンターブレイン。これが話題にならないのは、エロゲーとの業界の差か、ユーザーの差か、パイの差か。

<追記>今、検索してみたら、ちらほら同じ疑問を呈する方達を見かけた。やっぱりそうなるよなあ。

<さらに追記>考えてみたら、例えば「純愛ゲーだと思ったらバッドエンドルートで凌辱あった」てのは、一つの可能性として処理されるわけで、まぁこのご時勢反発もあるでしょうが、ま、よくあるパターンです。でも小説だとそうはいかない。このあたりの自由さというか、セーフティネットの存在はエロゲーにとっては利点なのかもしれませんね。勿論、小説には小説の、一回性には一回性の利点があるんでしょうが。